スマ★コラ
舌痛症は炎症や潰瘍などどいった特定の原因がないにもかかわらず舌に持続的な痛みを感じる疾患です。近年、その発症機序として神経障害性疼痛の観点から注目されており、舌痛症は神経障害性疼痛の一種とみなす考え方が有力視されています。神経障害性疼痛とは、神経系の損傷や機能障害により生じる慢性痛です。
舌痛症の場合、明らかな神経損傷は認められませんが、中枢神経系における痛覚伝達経路や痛み制御系の異常が関与していると考えられています。つまり、末梢神経への障害はないものの、脳や脊髄レベルでの神経の機能異常により、慢性的な舌痛が生じているというわけです。ただ、これだけが原因というわけではなく、ストレスやホルモンバランスの乱れなど様々は原因が絡み合って発症していると考えています。
舌痛症は舌が痛むだけではなく、口腔内の違和感、味覚異常、乾燥感など様々な症状が併存している場合も多いです。
特徴
- 舌や唇、歯肉などにヒリヒリした痛みがある
- 痛みはあるが、食事に支障はない
- 痛みは波があり、1日の中では特に夕方になると痛みが増す
- 何かに集中している時は気にならない
- ガムや飴などを口に含むと痛みが緩和する
- 痛む場所は口の中の様々な部位に移動することもある
- 比較的中高年の女性に多い
これら全てが当てはまるだけではなく、他の症状を訴える患者さんもおられます。
治療法
①問診
症状が出た時期、どのような痛みか、きっかけはあるかなど丁寧にお聞きします。
②各種検査
視診(見るだけ)では除外することができない、カンジダ症や鉄分、亜鉛不足による疼痛を除外するために真菌検査、血液検査を行います。
③投薬治療
検査結果が正常な場合、舌痛症と診断し投薬による治療を開始します。治療には主に抗うつ薬を用いますが、決してうつ病に対して処方するわけではありません。抗うつ薬は神経障害性疼痛や慢性疼痛の治療に用いられており、舌痛症の症状緩和にも有効であると考えられています。
舌痛症は「精神的な病気」「メンタルが弱いからなる病気」ではありません。いわば脳が一種の興奮状態になり痛みを感じやすくなっている状態だと考えてください。投薬期間は薬の量を調整しながら、半年~1年程度は継続していきます。
④認知行動療法
投薬治療と平行して行います。舌痛症の病態について詳しく説明し、上手に病気と付き合う方法を説明し、日常生活に取り入れてもらいます。病気との付き合い方が上手になると、薬の効果もより発揮されて症状の改善につながります。
最後に
舌痛症は珍しい病気ではないのですが、周囲の人に舌痛のつらさを理解してもらえなかったり、病院などでも「気のせい」などと言われ、ある種の絶望感を感じている方もいらっしゃいます。
当院では舌痛症に対して専門的な治療を行っています。少し時間がかかりますが、舌痛症はきちんと治療すれば7~8割程度の方は症状が改善しています。
少しでも不安があればお気軽にご相談ください。