スマ★コラ
耳管は咽頭と中耳をつなぐ管ですが、普段は閉じていて、嚥下(唾を飲み込む)などで開きます。耳管が閉じないため、自声強調(自分の声がひびく)・耳閉感(耳の中になにか詰まっている感じ)・自己呼吸音聴取(自分の呼吸音が耳で聞こえる)などの症状を引き起こす病気を耳管開放症といいます。急激な体重減少・妊娠・脱水などで症状が起こることが多いとされています。耳管開放症の方は不快な症状をとるために鼻すすりを無意識にすることも多く、鼻すすりによって鼓膜が陥凹して中耳側に凹み、そこに耳垢がたまって周囲の骨を溶かす真珠性中耳炎を引き起こすこともあります(鼻すすりロック型中耳真珠腫)。この場合、話すすりを中止するために耳管開放症の治療と中耳真珠腫に対する鼓室形成術の両方が必要となります。
耳管開放症の生活指導・治療
前にかがんで頭を下にしたり、横になると症状が楽になります。脱水によって耳管の粘膜が薄くなって耳管が広がってしまうため、脱水にならないように水などを飲むのも有効です。また耳管には脂肪も関連しているため、体重を減らしすぎないようにするのも大切です。漢方薬などが有効な場合もあります。
上記のような生活指導や投薬で改善がない場合は、鼓膜が呼吸で動かないようにシールを貼る、鼻の奥から耳管に向かって炎症を起こす薬をいれて狭くする治療があります。そのような治療でも日常生活に支障をきたす難治性耳管開放症の場合は、鼓膜に穴をあけて耳管ピンを耳管に留置することで耳管を狭くする「耳管ピン挿入術」を行います(当院は耳管ピン手術認定施設となっています。)
耳管ピン挿入術
保存的加療で改善せず、日常生活に支障をきたす難治性耳管開放症の方に耳管ピン挿入術を行うことがあります。当院では全身麻酔、1泊2日入院でおこなっています。鼓膜に穴をあけてシリコン製の耳管ピンを挿入すると80%の有効率があるといわれています。しかしながらピンのサイズが合わない場合は入れ替えが必要だったり、鼓膜穿孔(鼓膜の穴が残る)、滲出性中耳炎(耳管が狭くなりすぎて鼓室内に液体が溜まる)、難聴、耳鳴などが起こる可能性があります。