スマ★コラ
医療機器
外科
治療法
ハイパーサーミア
外科
澤田 勝寛
がん細胞は42.5℃以上で死滅する熱を利用したがん治療
※保険診療
熱を利用し、がん細胞を死滅させる
人間の細胞は42.5 度以上に温度が上がると死滅します。がん細胞も同じです。違うのは、通常の細胞は血流を増やし、温度上昇を防ぐことができますが、がん細胞は血管の拡張が無く、血流が少ないため蓄熱しやすいため、正常組織に比べ高い温度になります。浅在性悪性腫瘍（体表近くにある腫瘍）では、温めることでがん細胞だけ死滅させることができるため、腫瘍縮小効果が期待できます。深在性腫瘍（体の中の方にある腫瘍）では、温度上昇が40℃前後であっても、薬物療法（化学療法/ 抗がん剤治療/ 分子標的薬/ 免疫チェックポイント阻害剤）や放射線治療の効果を高めることができます。温める事により放射線治療効果を高め、抗がん剤は腫瘍内部で濃度が上昇する事が報告されています。
ハイパーサーミアの原理
患部を電極で挟み、そこに人体加温に最適な8MHz波（高周波）により、1秒間に800万回の速さで、＋と－が入れ替わる電気が流れ、体内組織の＋－分子も同じ速さで激しく回転、振動を繰り返します。 その回転や振動によって生じる摩擦熱で体内が加温されます。当院では、サーモトロン-RF8 EX Edition（山本ビニター社製）を使用しています。
サーモトロン－RF8は世界で初めてがんの高周波ハイパーサーミア装置として正式に認められた治療装置です。この装置で治療した多くの症例があり安全性と有効性はたくさんの学術論文で証明されています。
◆中央の治療テーブルに通常はあおむけになった状態で治療をしますが、がんのある部位によっては、電極を回転させて体側方向からも加温することができます。
◆電極にはボーラスという水袋がついており、温水や冷水が還流し皮膚面を保護します。
◆制御部で加温出力や温度等の情報を観察し、それらを制御します。
治療の流れ
①トイレを済ませておく
②治療着に着替える（治療部位により着替えないこともあります）
③体温・血圧・脈拍の測定
④技師・看護師より治療体位の説明（治療部位により異なります）
⑤ボーラスと電極のセット
この時に姿勢を調整します。加温が開始されると身体の動きが制限されますので30～40分間
同一の姿勢になります。肩や腰、骨盤などが機器に接触し、痛みが出たり、気になることがありましたら必ずお話ください。
⑥出力の調整
RF波が効果的に出るように、調整。
⑦治療開始
目標の温度になった時点で、その温度を保ちながら30～40分で終了となります。
※患者様の状態を見て、治療時間を短縮する場合もあります。
※治療中、次のようなことを感じる場合があります。
◆ 熱感
温めている部位の周りがまれに熱くなることがあります。人間の身体は凸凹していたり、骨など電気の通りにくい場所が合ったりするために起きることです。我慢できない熱感を感じたときは、技師や看護師にお知らせください。
◆ 発汗
治療中はサウナのような暑さのため、多量の汗をかくことがあります。患者様の発汗状態により、送風や冷房を入れるようにしております。
◆ 痛み
温めている場所の周りにチクチク・またはピリピリといった痛みを感じることがあります。そのままにしておくと熱傷（やけど）になることがありますので、技師や看護師にお知らせください。
ハイパーサーミアの適応と治療費
保険点数
M003 電磁波温熱診療報酬点数
（一連につき）
深部加温 9000 点
（３割負担：27,000 円）
浅部加温 6000 点
（３割負担：18,000 円）
◆脳・眼球・血液疾患を除く部位で適用。
◆初期・末期等、がんの段階を問わず治療できます。
◆がん組織型や種類を問いません。
保険点数は一連（約8回）で深部加温では9000点（3割負担で27,000円）、浅部加温では6000点（3割負担で18,000円）となっております。
※治療中断による返金は出来ませんのでご了承お願いします。
また、がん保険で給付金の対象になります。
（給付金の無いがん保険もあります。加入している保険会社にご確認ください。）
※診察料・検査料等は別途かかります。ご了承ください。
ハイパーサーミアのおすすめポイント
ハイパーサーミア（温熱治療）が、がん細胞を壊死させるほかに次のような重要な役割をすることが分かっています。
高周波ハイパーサーミアは、従来のがん治療のような副作用がほとんどないので、何度でも治療を受けることができます。（※保険適用は２ヶ月８回までです）
1.加温による免疫の活性
高周波ハイパーサーミアを加えることで、病巣及び周辺組織の温度が39℃～41℃近くに上昇、体内の免疫（NK 細胞、インターフェロンγ、マクロファージなど）が活性し、がん細胞に対して攻撃性を発揮しますと学会等で発表されています。
2.がん組織への薬剤取り込み促進
薬剤治療と高周波ハイパーサーミアを併用すると、がん組織への薬剤の取込み量が数倍に上昇することから、薬剤の効果を一段と高めます。また、薬剤の投与量を少なくでき、副作用を軽減致しますと学会等で発表されています。
3.QOLの向上が見込める
がんによる痛みの緩和、食欲増進、体力の回復、気分がよくなるなど、生活の質の向上が見込めます。
4.放射線治療の効果を増強
高周波ハイパーサーミアを併用させることによって、放射線効果をさらに高めます。また、放射線抵抗性のがんにも有効なことがたくさんの学術論文で証明されています。
治療を受ける方へ
◆上半身の加温の場合は加温前の食事は控えましょう。飲み物は大丈夫です。
◆治療前後は水分を十分に補給しましょう。
◆身体に付けている取り外し可能な金属製の物は治療前に取り外してください。
（眼鏡、時計、指輪、アクセサリー、金属含む貼付剤、カラーコンタクトレンズ等）
※義歯は取らなくても結構です。
◆加温中まれに身体が触れることで通電することがあるため、医師・技師・看護師はゴム手袋をして治療にあたります。
ご了承ください。
◆加温中は、点滴架台や治療ベッドの金属部分には触れないようにしてください。
◆以下に記載する項目に該当される方はスタッフに申し出てください。
- 妊娠中の方
- 心電図、ペースメーカー、植え込み型除細動器等を装着している方
- 加温域内に金属片（ステント）等を留置している方（チタン製は問題がありません）
- 金属粉を含む刺青等をしている方
持ち物
- バスタオル２枚、小さめのタオル
- 着替え（汗をたくさんかくことがありますので、ご準備ください）
- ドリンク類（治療中に飲むことができます）
よくある質問
理論上はあらゆる癌に有効ですが、実際には温めやすいもの・温めにくいもの様々です。
これらのことを踏まえて上で、無作為試験で有効性を示されている疾患として、再発乳癌・メラノーマ（悪性黒色腫）・子宮頸癌・直腸癌・膀胱癌・頸部リンパ節転移などがあげられます。これら以外でも脳腫瘍・肺癌・食道癌・肝臓癌・膵臓癌など殆どの癌で、有効であった患者さんが多数報告されています。
有効性が示されている再発乳癌や頸部リンパ節転移以外の転移がんや再発がんでも、効果的なことが多々あります。また、現状としてハイパーサーミアを受けられているおおくの方々が転移がんや再発がんとなっています。
現在、がんに対して“必ず十分な加温ができる”装置は開発されておらず、ハイパーサーミアだけでがんが根治できるのは稀と考えられています。一般的には放射線治療や抗癌剤治療と組み合わせるのが一般的です。
体が温められると、熱ショック蛋白が産生されます。この熱ショック蛋白が産生されると熱に対して効きが悪くなるため（熱耐性）、もう一度加温してもなかなか癌細胞は死んでいきません。熱ショック蛋白は加温後72時間以内で消失しますので、一般的には週に1回もしくは2回のペースでハイパーサーミア治療を行なうのが普通です。
まれに、熱傷、脂肪硬結（皮下脂肪にできるしこり）、脱水などが起きます。
副作用を防ぐために、加温中に皮膚表面のピリピリ感や熱感を感じたら、技師・看護師にお知らせください。脂肪硬結は1～２週間程度で自然に消失し痛みもなくなります。脱水は治療前後にしっかり水分補給していただくことで予防できます。
個人差もありますが、副作用が非常に少ないことがこの治療の特徴の一つです。
以下のいずれかに当てはまる方は受けていただくことができません。
・ペースメーカーや加温部位にステントなど金属が入っている方
・全身状態の悪い方
・心臓、腎臓の機能が悪い方
・適応外の病気（脳や眼球と血液のがん）の方
・意思の疎通が困難な方
・妊娠中の方
・栄養状態が極端に悪い方
ご予約・お問い合わせ
下記番号にお電話していただき、「ハイパーサーミアについて/ 予約」とお伝えください。
ハイパーサーミアのスタッフにお繋ぎします。
月～土（祝日除く）14:00 ～ 17:00
TEL : 078-735-0001
