医療法人社団 慈恵会 新須磨病院

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2024年冬号

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目の疾患特集 動脈硬化特集

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 目の疾患特集 

白内障・緑内障とは

白内障の原因は加齢が最も多く、
誰もが発症する可能性のある病気です

 白内障は、加齢に伴って生じる『水晶体の濁り』が原因で起きる眼の病気です。水晶体はカメラで例えるとレンズの部分で、外からの光を集めてピントを合わせる働きを持っています。眼にとってのレンズである水晶体が年齢とともに濁ってしまうことで、視界がかすんで見える、視力が低下する、光が眩しく感じる、明るい場所と暗い場所では見え方が異なるなどの症状が現れます。
 患者さんには「白髪みたいなものですよ。」とよく説明するのですが、それくらい一般的で、誰が発症してもおかしくありません。
 ただ、糖尿病やアトピー性皮膚炎、ステロイド薬を使っている方などは早くに白内障になることがあります。

白内障は日帰り手術で治る病気です

 白内障が進行していくと眼鏡を掛けていても見えにくくなったり、日常生活に支障が出てきます。
 治療で最もよく行われているのが「超音波水晶体乳化吸引術」という手術です。この手術では、角膜に2.4mmの創口を作り、超音波を用いて濁った水晶体を砕きながら吸い取ります。ただ、そのままではピンボケの状態になってしまうので、今まで水晶体のかわりになる人工レンズを眼の中に入れます。日帰りで出来る手術ですが、ご希望の方には、当院では入院でも対応しています。片眼ずつ手術を行いますので、片眼の手術が終わって約2週間後にもう片方の眼の手術を行うことが多いです。なお一度手術を行えば基本的に人工レンズを交換する必要はありません。

緑内障は白内障とは全く違い、
自覚症状がないまま視野が狭くなる病気です

 緑内障は白内障と名前が似ていることから、同じような病気だと勘違いされる方がいるのですが、全く違う病気です。緑内障は眼圧が上がることによって視神経が痛む病気です。視神経は目から入ってきた情報を脳に伝達するという働きを持っていて、ここに障害が起こると視野が狭くなってしまいます。視野が狭くなると言っても黒く欠けるわけではなく、初期はほとんど自覚症状はありません。そのため、健康診断や別の病気で病院に行った際に緑内障だと診断される方が多いです。中等症以上になると、下の方や上の方だけぼんやり見えにくかったりするなど、見えにくいと感じる方が増えてきます。
 緑内障を発症する原因に関してはさまざまな要因が組み合わさっているため、確定的なものはありません。しかし、血縁に緑内障の方がいらっしゃったり、近視が強い方などに多く見られる傾向がありますので、心当たりのある方は一度受診をお勧めいたします。

 緑内障は完治する病気ではないので、治すのではなく進行を遅らせる治療になります。緑内障が失明原因の1位と言われていますが、その原因の1つが先ほどもお話しましたが、気付かない点です。自覚症状が無いため緑内障と診断されても途中で治療をやめてしまい症状が進行し、失明に至ってしまう方もいます。ただ失明原因の1位ではありますが、これは緑内障に罹患する方が多いためであり、緑内障になると必ず失明するというわけではありません。緑内障の失明率はかなり低く、早期発見早期治療を行えば、高い確率で視野の確保と視力の維持は可能です。
 治療法は目薬の点眼が一般的です。点眼治療によって、眼圧を下げるようにします。それでも眼圧が下がらない場合は薬を変えたり、量を変えたりして治療していきます。大半の患者さんは本治療を継続的に行って進行を防ぎます。本治療でも進行してしまう患者さんの場合は手術になります。緑内障の手術には、これまでの眼圧の推移や重症度によって様々なものがあります。

 白内障の場合は、かなり進行している場合は別として患者さんが何を求めているかをしっかり聞いて治療することを大事にしています。手術を嫌がる患者さんに対しては無理に手術を行うのではなく、患者さんのライフスタイルを崩さない方法を探します。
 緑内障の場合は、放置しておくと悪化の可能性があるので、その点はしっかり治療を行いますが、患者さんの話を聞きながらしっかり進めるようにしています。
 どちらの病気も初期ではほとんど症状が出ない病気です。健康診断や少しでも眼に違和感がある場合は、まずは眼科を受診してもらい、眼の状態を知ることが大切です。

 動脈硬化特集1 

 脂質異常症とは、血液中の脂肪成分であるコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多過ぎる、あるいは少な過ぎる状態のことを言います。また以前は高脂血症と呼ばれていた症状も脂質異常症に含まれます。もともと使われていた“高脂血症”という用語は病態を正しく表していないとして、2007年に日本動脈硬化学会が診断名を「脂質異常症」に変更しました。
 その理由としては、血液中の中性脂肪やLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が基準値より高過ぎても、逆にHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値が低過ぎても、動脈硬化を引き起こすリスクがあるためです。HDLコレステロールの値が低い場合でも“高脂血症”と呼ぶのは適当ではないとの判断から「脂質異常症」になりました。この脂質異常症は心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化によって発症する可能性のある血管系の疾患の原因の一つになると考えられています。
 脂質異常症になりやすい方は、生まれつき(遺伝的に)脂質合成の高まっている場合や、体内で脂質処理が上手く出来ない体質の方、脂質が豊富な食材(牛肉や豚肉の脂肪分、カツ、天ぷら、乳製品など)を好んで食べる方、またカロリーオーバーな食事をしていながら、運動不足の方にも多く見られます。これはエネルギー消費を行わないと血中に中性脂肪という形で溜まっていくことが原因になります。つまり、脂質異常症の原因のご本人の体質や食生活を含む生活習慣によるものや体質と生活習慣の両方が重なることで起こると考えられます。
 しかしこの病気で注意しないといけない点は、太っていない方でも、遺伝的に悪玉コレステロールが基準値より高い場合は、脂質異常症になる可能性があるということです。またこのタイプの方は中学・高校生時代から高LDLコレステロール血症に晒されているため、動脈硬化の進展が一般の方よりも10~15年早いと言われています。中学・高校時代は健康診断で脂質検査をする学校はまだ少ないですから、気付かないまま大人になり、社会人になって初めて気づくという方もおられます。

 脂質異常症が進行すると動脈硬化が進展し、ある日突然心筋梗塞になってしまい突然死に至る場合があります。というのも、脂質異常症は“サイレントキラー”と呼ばれるほど自覚症状が無いまま進行してしまう病気です。最近まで元気だと思っていた方が実は脂質異常症で、さらに症状が進み動脈硬化を引き起こして亡くなってしまうことも少なくありません。毎年健康診断を受けている方は発見出来る可能性が高いですが、著名人の方や自営業の方ですと忙しかったり、ご自身で健康診断の手続きをする必要があるため、自覚症状がないとなかなか進んで診断を受けようとは考えにくいと思います。

 実際の治療には、まず食事療法が挙げられます。先述した脂質が豊富な食材(牛肉や豚肉の脂肪分、カツ、天ぷら、乳製品など)を好んで食べる方の場合やカロリーオーバーな食事を行う方などは、脂質が豊富な食材を控え、大豆製品や野菜、海藻、果物、青魚、植物性油(ピーナッツ・ヤシ油以外)などの摂取をおすすめします。他にも早食いや就寝前の飲食、まとめ食べなども控えた方が良いと思います。1日3回しっかり食事を行い、よく噛んで「腹八分目」を心がけていただきたいです。また運動療法も効果的です。ウォーキングや水泳などの大きな筋肉を動かして、身体に必要な酸素をゆっくり取り込む有酸素運動が適しています。
 具体的な治療は症状によって変わります。悪玉のLDLコレステロールだけが高い場合は、家族性(遺伝などの要因)が原因かそれ以外に体質や食事が原因かで対応が異なります。家族性の場合は、成人前から高LDLコレステロール状態にあったものと考えられるため、早期から動脈硬化が始まっており、積極的な薬物療法を始めることが選択肢の1つとなります。その他には先述した脂質が豊富な食材を避ける食事療法を始めることもありますが、効果が見られない場合は薬物療法を行っていただくことが多いです。
 中性脂肪が高い方にも、体質によるものか偏った食事による場合かで対応が変わりますが、いずれにしても、LDLコレステロールだけが高い場合の方と同じ食事療法(特に乳製品の制限)を行っていただきます。それでも効果が無い場合は薬物療法をおすすめします。しかし、中性脂肪上昇の原因にはアルコール摂取が深く関わっていますので、お酒を飲まれる方には、まず禁酒をしていただく必要があります。禁酒をしないとなかなか中性脂肪が下がらないため注意が必要です。
 HDLコレステロールが低い方の場合も中性脂肪上昇の場合と同じ対応になりますが、運動することでHDLコレステロールが上昇する場合もあります。HDLコレステロールが低い方で運動不足の方はまず運動不足の解消から心がければ良いと思います。
 nonHDLコレステロール(LDLコレステロールとは別の悪玉コレステロール)が高い場合は、LDLコレステロールと中性脂肪の両方が上昇している場合が想定されますので、先述した食事療法や薬物療法、運動療法のどれもが適応されます。そのためかなりの努力が必要になると考えられます。また、LDLコレステロールが120mg/dL~139mg/dLを境界域と言われ、この値の場合でも体質によってはすでに動脈硬化が進展している場合もあるので、まずは頸動脈エコーで動脈硬化が始まっているか否かを判定してもらう必要があります。もしすでに動脈硬化の進展の兆しがあるようなら、積極的な薬物療法の適応になると考えられます。
 脂質異常症は動脈硬化や脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、狭心症など、重篤な後遺症につながる病気を引き起こす恐れがあります。しかし極めてまれな場合を除き、脂質異常症は現時点で治療不能な病気ではありません。自覚症状が無いので症状で気付くことは難しいですが、定期的な健康診断や生活習慣を改善することで予防出来る病気ですので、日々の生活に気をつけて過ごすことが大事だと思います。

脂質異常症の診断基準

※1:基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とする。
※2:スクリーニングで境界域高LDL-C血症、境界域高non-HDL-C血症を示した場合は、高リスク病態がないか検討し、治療の必要性を考慮する。

 動脈硬化特集2 

 そもそも、動脈硬化によって血管が細く(狭窄)なったり、血の塊(血栓)によって血管が詰まる(閉塞)といった症状は、全身の動脈に起こります。脳の動脈が狭窄・閉塞すると一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こし、心臓の冠動脈が狭窄・閉塞すると狭心症や心筋梗塞、腎臓に起きると慢性腎臓病を引き起こします。足の動脈が狭窄・閉塞して栄養や酸素を充分に送り届けることができなくなると、足先が冷たくなったり、筋肉の痛みが出たりします。このような状態を閉塞性動脈硬化症と言います。
 ではどのような方に動脈硬化が起こりやすいかというと、高齢の方や高血圧、高脂血症の方、それと喫煙者にも多いですね。他には人工透析している方や膠原病の方にも見られます。男女比でいうと男性の方が多いですね。最近特に問題となっているのは糖尿病の方です。
 下肢の閉塞性動脈疾患(LEAD)は上述した内容と同じように骨盤内や足の血管が動脈硬化によって細くなったり、血栓によって血管が詰まる事で起こり、初期の症状として、足が冷たくなります。冬でも足の温かかった人が、夏でも冷たくなってきます。これが第1段階です。第2段階は、一定の距離を歩くとふくらはぎに痛みやしびれ、疲労感が溜まり歩行が困難になっていきます。しばらく休息すると治まるものの、また歩き続けると再び痛みだすという症状(間欠性跛行)が起こります。その後、寝ているだけでも足が痛くなる安静時痛という第3段階に進行し、最終的には足が腐って(壊疽)しまいます。壊疽になると足の切断や合併症を引き起こす可能性があります。ただし、神経症状があれば壊疽の段階で初めて発見されるケースもあります。

 通常、足がしびれたり壊疽に至るまでの足の色の変化で気付くはずなのですが、下肢の閉塞性動脈疾患(LEAD)の多くは糖尿病の方でまた高齢者に多いため、神経障害や視覚障害などを合併しており、足のしびれや足の状態を確認することが出来ず進行していることが多いです。
 本院の治療では最初は運動療法や動脈を拡げて末梢血流を改善させる血管拡張剤や抗凝固剤などを使った薬物治療を行います。病状が進行してしまうと経皮的にカテーテルを血管内に挿入し、動脈の閉塞病変や狭窄病変を拡げる血管内治療(カテーテル治療)やバイパス術を行います。
 下肢の閉塞性動脈疾患が増加している原因の一つは高齢化に伴う動脈硬化ですが、特に糖尿病の透析患者さんが増えている点です。糖尿病の方はご自身の体調をしっかりコントロールし、こまめに爪切りや足浴を行うことで足の状態を確認しましょう。糖尿病で無い方でも動脈硬化によって起きる包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の状態になり、足の血行不良を起こす場合があります。少しでも気になる方は専門外来で診てもらうことをおすすめします。

 部署紹介 

システム課

院内のスタッフが効率的に
パソコン業務を行えるように日々

 システム課では院内で使用する電子カルテや、それに付随するシステムの保守(システムトラブル、プログラム作成)、看護師や事務などからのパソコン周りの相談業務、また旧型のパソコンから使えるパーツを取り出し、パソコンの故障時に部品交換を行っています。業務内容自体は一般企業のシステム部門とあまり変わらないとは思うのですが、土日や祝日、夜間などでも仕事になる可能性があるのは、24時間稼働している病院ならではかもしれません。
 通常は朝8:30から始業し、午前中は電子カルテに関する文書の作成やそれに使用するプログラムの作成、パソコンのトラブル対応などを行っています。午後からは他部署スタッフと院内で使うパソコンのシステムについての打ち合わせを行い、他部署スタッフが使いやすいシステムを考案・構築し、何もトラブルが無ければ 17:00頃には終業します。
 また仕事を行う上で大切にしていることは、パソコンのシステムを新しく導入する時や更新作業などを行う時は、操作性が以前と違和感がないようにするよう心掛けています。例えば、電子カルテを使っている時に登録するボタンが、いつもの場所にないと混乱すると思うんです。院内のシステムも同じように、いつも使っているボタンや操作がいつも通りじゃないと作業効率が悪くなります。作業効率を落とさないようにするためにも、以前の操作性を損なわないシステムを導入・更新するように考えています。

システム課 岩田

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